事業実施体制
課題のヒアリングと最初のアイデア出し
入院児が抱えてしまうストレスや不安がどのようなものなのか、宮城県立こども病院の協力のもと現場のヒアリングを実施。病院の環境は素晴らしいものであるが、それでも患者の方の年齢、家族関係や病状に応じて、様々なストレスを抱えてしまう可能性があることを知ることができました。
鹿野研究室の学生たちとともに、こうした不安を少しでも和らげるようなデザインのあり方を模索し、12案のメディア活用法を提案しました。看護師の方々からは、アイデアの不備の指摘や、可能性のある提案へのアドバイスなど、様々な意見をいただくことができました。
研究会の発足とプロトタイプ方向性確定
看護師さんの意見をもとに、入院児支援に病室に映像を投影する体験型映像が活用できるのではないと仮説を立て、プロトタイプ開発にヤグチ電子工業株式会社様の協力を依頼しました。仮説の確定にあたっては特に下記の3点コメントに注目しました。
1.使用環境や用途の汎用性が高い
2.行動制限のある子どもも楽しめる
3.操作や管理に手間がかからなそう
さらに病室投影型であればスマートフォンと異なり、同じ画面を複数の人間が見ることで、会話を促進しコミュニケーションのきっかけとなる可能性があることも重要視しました。
病室の計測とアイデアの精緻化
プロトタイプ開発のため、実際に使用を想定した現地調査を実施しました。現場では病室のサイズだけでなく、部屋の各所での明るさ、プロジェクターの騒音など、設置シミュレーションに必要である情報を収集しました。また、同時並行として開発機器の選定や、アイデアの精緻化を進め、具体化のプロセスを進めました。
病室の計測の際、インタラクティブ映像の投影テストも行いました。病室の天井の形状をリアルタイムに分析し、ジェネラティブなモーショングラフィックスを投影するテストになります。
プロトタイプの完成
ヤグチ電子工業株式会社の技術者の方々には、カメラ+タブレット+プロジェクターをモバイルバッテリーで駆動させるためのハードウェア開発に必要な、様々な専門的知見を共有していただくとともに、ケースや内部構造の設計を担当していただきました。完成したプロトタイプは研究成果として、せんだいメディアテークにて展示し、研究発表を行いました。
研究会の成果と今後の展望
今回の研究会ではリサーチからアイデアの具体化、プロトタイプ開発までの一連のプロセスを進めることができ、下記の3点が主だった成果であったと考えています。
・医療機関との協力体制の確立
・メディアデザインの応用範囲拡大の知見
・光造形を活用したラピッドプロトタイピング手法
また、今後の展望として、コロナ渦の現状において医療機関での実験などが制限される中、進行の停止を余儀なくされていますが、以下の3点を目標にさらに研究を進めていければと構想を継続しています。
・より現実的なシステム構築
・コンテンツの方向性の妥当性検証
・医療機関での投影実験と評価